黄昏に香る音色 2
ステージ上に上がる志乃たち。

KKは、そんなことは気にせず、サックスを吹き続ける。

もう演奏ができないステージ上のミュージシャンから、楽器を借りる。




「いいのか?」

ステージを傍観するティアのそばに、ジャックが来た。

「いいんじゃない」

ティアは、口元に笑みを浮かべ、

「ちょうどほしかったんだから…」


ステージ上で、ギターを手にした大輔は、足が震えてきた。

直に音を聴くと、凄さがわかる。

意識が、持っていかれそうだ。

昔、啓介のそばにいたことがあるが、

比べものにならない。

これは、長時間保たない。

大輔は、志乃の身を案じた。

マイクを握り締め、

志乃はカウントを取る。

1,2,3…。

このサックスを、かき消さなければならない。

とっさに、大輔が弾いたリフは、

ハードロックの名曲。

ディープ・パープルのBURN。

凄まじい爆音が、会場を覆い尽くす。

志乃のシャウトが、こだまする。

観客がこちらを見た。

(いける!)

志乃や大輔が確信した、その時。

ティアは、クスッと笑った。

「壊れちゃえ…」

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