黄昏に香る音色 2
受け取ったバトン
次の日、明日香はアメリカへと旅立った。

泣きじゃくる和恵を何とか、なだめて。

向こうの日本人学校に通っていた和恵を、転入させようか悩んだけど、

しばらくは、ダブルケイで、里美が面倒を見ることにした。

香里奈は、普通に学校に通う。



そんな日々が、何日か続いた。



町を歩くと、アメリカデビューした志乃の歌声が、溢れていた。

向こうでのチャートアクションも好調で、

シングルはトップ20に、いきなり食い込んでいた。

向こうでのライブ中、失神者が続出していた。

香里奈は、志乃の曲に、

妙な違和感を感じていた。

目立たないが、

微かに音がしていた。

意志がある別の…

表面には聴こえない…

聴こえる演奏の奥の方で、

何とも言えない絶望とともに…。

明るく、激しいダンス曲なのに…

どうしょうもない悲しみが、隠されている。


香里奈は、嫌な予感がした。

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