黄昏に香る音色 2
日差しがこぼれる中、

香里奈は、体育館に向かった。

今日は土曜日。

そして、里緒菜と直樹たちの発表会が、ある日だった。

香里奈は、恵美と祥子と一緒に、会場に入った。

広い体育館は、三分のニが、もうすでに人で埋まっていた。

3人は、真ん中より少し前の席に座った。

「結構入ってるなあ」

恵美は、周りをキョロキョロと見回した。

「そうだね」

祥子が、相づちをうつ。

香里奈は、体育館に入ってきた和也の姿を見つけた。

和也も、香里奈たちに気づいた。

目が合ったが、

和也は、一番後ろの席に座った。


体育館に、劇が始まるアナウンスが流れた。

離れて座る和也を、訝しげに見ている香里奈に、気づいた祥子。

「もう始まるわよ。香里奈ちゃん」

「ああ…」

香里奈は、前を向いた。



ゆっくりと幕が上がり、

劇が始まる。

舞台の上に、

互いに背を向けた…

里緒菜と直樹。

これは、互いに惹かれあいながらも、

すれ違う恋人たちの物語だった。

互いに動かない二人。

やがて、

伏せみがちな瞳のまま、

里緒菜が振り返る。

「あたしはただ…あなたを見つめていたかっただけ…」



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