黄昏に香る音色 2
優は直樹を見つめ、

直樹も優を見た。




しばらくの間。




直樹は、フッと笑った。

「申し訳ないけど…俺は、音楽に関して、詳しくないし…ここではない…何かを求めたこともない」

直樹は、優に背を向けた。

「失礼するよ」

「それは…諦めたからですか?」

優の言葉に、直樹は振り返る。

「もう仕方がないと」

直樹はすぐに前を向き、歩き出す。

その背中に向けて、

「速水さんは!ここではない世界を、自分で創れる人です!」

優は叫んだ。

「それは、独りではなく…みんなを連れていくことのできる…限られた人…選ばれた人です」

直樹は、足を止めない。

「世界を求めるあなたとは、違う!それに…あなたは…」

優は、叫び続ける。

「速水さんの創る世界に、住むことはできない!」

直樹は足を止めた…一瞬だけ。

「あなたは、対等を望んでるから」

直樹は拳を握りしめ、

肩を震わせたが…

決して、もう振り返ることはなかった。
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