黄昏に香る音色 2
自由の女神が、すぐそばに見える…

海辺の近くで、待ち合わせた。

サミーは、赤ん坊を抱いて歩いていた。

荷物なんてなかった。

健司達がこの…

ニューヨークに残したのは、

一粒種の

たった1人の赤ん坊。




沈む夕陽の輝きの中、

1人の女が立っていた。

わざわざ日本から…自分を捨てた男と

奪った女の

子供を引き取る為に。


もし、恨んでいるようなら、

サミーは、この子を渡すつもりはなかった。

生まれたばかりの子供を、わざわざ不幸にすることはない。


深々と、頭を下げた恵子に、

サミーは子供を見せた。

その時の恵子の顔…。

サミーは、一生忘れないだろう。

あまりにも、優しい笑顔に、

サミーは、赤ん坊を恵子に渡した。

恵子の腕の中に、包まれた赤ん坊は…

泣きもせず、

嬉しそうに笑った。

幸せそうに…

夕陽で、輝いた海がキラキラ光り…

その中で、


幸せそうに、笑い合う…親子。

サミーには、そう見えた。

出会うべき2人…。



あれから、

何十年もの時が過ぎた。

サミーは再び、

自由の女神が見える

あの場所に来ていた。


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