黄昏に香る音色 2
サミーのスタジオに、電話があったのは、

啓介が出ていってから、数時間後だった。

スタジオ内で、心配している明日香に、

電話を取ったダイアナが言った。

「明日香ちゃん…啓介を引き取りに来いって…」

電話は、場所を告げると、すぐに切れた。

「誰からだ?」

サミーがきいた。

「わからないわ。女だったけど…」



明日香とサミー、スタジオの男、数人で、

告げられたライブハウスに、向かった。



地下にのびる長い階段を、駆け降り、

扉を開けると、

中は真っ暗で…

ステージの一部だけを…

ピンスポットが照らしていた。


明日香は、ステージまで走る。

ピンスポットに照らされ、

うずくまり…震えている啓介がいた。

「啓介!」

明日香は駆け寄った。

ライブハウスには、もう啓介しかいなかった。

サミーが、ステージに上がると、

足元に、破壊されたアルトサックスが、転がっていた。

サミーは、アルトサックスを拾い上げ、

「何が…あったんだ?」

ステージ上から、ライブハウスを見回したが、

もう誰もいなかった。
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