黄昏に香る音色 2
「元気そうね」

ティアは、微笑んだ。

その胸には、何か黒い箱を抱いていた。

とあるビルの屋上に、明日香は呼び出された。

「ティア…」

明日香は、ティアに近づこうとした。

風が強い…。

眼下に、ニューヨークの光の街並みが広がっている。


「近寄らないで!」

ティアは、いきなり取出し銃口を、明日香に向けた。

明日香は、足を止めた。

「ティア…」


ティアはフッと笑い、

「あたしのすべては…終わったわ。あたしの愛する者は、もう誰もいなくなった」

ティアは片手で、箱を抱きしめた。

「明日香!最後に、あんたに言いたかった」

明日香は、ティアを見つめた。

銃口の向こうにある

悲しい目。


「パーフェクト・ボイス…。あたしにとっての…完璧な歌は…あんただった…」

風が、2人の髪をなびかせる。

「いや…あんたと、啓介。そして…マルコや、あたしの仲間たちの笑い声」


かつて…

ティアの故郷で、仲間たちを囲んで、

歌うLikeLoveYou。

「あの頃の音を…こえられなかった…」

ティアの瞳から、

涙が流れた。

「あの幸せな日々…」

ティアは、

銃口を、自らの額に当てた。
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