黄昏に香る音色 2
「面白い?」

里緒菜は、優の顔を見た。

満面の笑みを浮かべている。

はっとして、里緒菜が振り向くと、

扉の向こう…

心配そうに、こちらを覗いている香里奈がいた。

「香里奈…」

「うわさの歌姫が、どれくらいのものなのか…」

里緒菜は、優に視線を戻した。

笑いかけながら、目は笑っていない。

「同じ土俵で、勝負してみたいの」

「あなた…」

優は不敵に笑う。

「あたしも、あなたのとこのオーディションに出る」

優は、香里奈に手を振った。

香里奈ははっとして、軽く頭を下げる。

「まあ…かわいいけど…かわいいだけで」

優は、里緒菜の耳元に、顔を近づけ、

「あの人の彼女だなんて…許せない」

里緒菜は、体を優から遠ざけると、

「あなたに、そんなことをいう権利があって」

「好きなの」

優は、真剣な表情になり、

「だから…愛する人の心配をするのは、当然」

「愛してるから…好きだから…何でも許されるはずがないわ。香里奈は、あの人の彼女なのよ」

「だから?諦めて…もう関係ないと…。つまらない女」

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