黄昏に香る音色 2
「失礼します。お客様をお連れしました」

扉がノックされ、秘書が顔を出した。

「お通ししろ」

ビルの最上階にある会長室。

時祭光太郎は、ディスクの後ろのカーテンを開き、

窓から、町を見下ろしていた。


「失礼します」

秘書に促され、入ってきた女性。

「お久しぶりです。お父様」

会長室に入ってきたのは、

明日香だった。


光太郎は振り向くと、

「来てくれるとは、思わなかった」

「呼び出しておいて、驚いているんですか?」

明日香の言葉に、光太郎は苦笑しながら、

明日香をソファに促した。


明日香が座ると、

「時間がないだろ。単刀直入に言おう」

光太郎も座る。

明日香の顔を見据え、

「私の後を継いで…会社に入ってくれないか?」

光太郎の言葉に、明日香は驚き、動きが止まった。

「音楽をやめたらしいな…」

光太郎は、明日香をじっと見つめる。

「お前ほどの者が、歌をやめて…あんな場末の店に、ずっと閉じこもるなんて…」

光太郎は話ながら、

娘の顔を眺め、

こんなにゆっくり娘をみるなんて…

赤ん坊の頃以来だと思っていた。

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