天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「しかし……それでも、やめることは、できなかった」

男は、少女がトイレにいったことを確認すると…少しため息をついた。

結局…あの戦争は、いらなかった。

いや…仕方なかったのだろうか…。


人ではない力を持つ者達は、人として、戦いに参加した。

確かに、レーザーなどない時代は、彼らの五感の鋭さを利用し、零戦などの目視戦闘や、ジャングルなどの視界の悪い場所では、活躍できた。

だが…人は恐ろしいかった。

すぐさま…それらに対抗する兵器を作り出したのだ。


(人は、戦争の中で進化するのか?)

たった数年の戦争で、人は確かに進化した。

戦後…世界を豊かにした技術のすべてが、戦争の恩恵により、生まれた出たものだ。



「くだらんな…」

いつのまにか、座席に座っていた少女に、男はまた頭を下げた。

別に驚いてもいない。

少女は足を組み、少しツンとした顔を、男に向けた。

男はまた、頭を下げ、

「おかえりなさいませ…悟(サトリ)様」


悟響子は、ウムと頷くと、男の顔を真っ直ぐに見据え、

「そんな進化など…何も生み出さない。作っても、壊すだけだ…」 

響子の能力は、心を読むことができた。

「生活に身につかない進化など…」

響子は、右手を突き出し、指で銃の形をつくる。そして、男の額に当て、

「性眼(さがめ)…貴様は、人になりすぎている。そんなつまらんものは、普段はいらないはずだ…。人は、外敵を排除し、食物連鎖の頂点に立ったのだからな」

響子はフッと笑うと、指を二席向こうの電球に向けた。

破裂音とともに、電球は砕け散った。



「されど…悟様」

何か言おうとする性眼に、響子はまた指先を向けた。

「だが、武器を売り…それで、生きている者がいる!そいつらは、武器を作り…さらに売る為に、戦争を起こす」

響子は、にこっと笑った。

「ある意味…共食いだ…」
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