天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
車は街から離れ、

ひたすら、何もない草原を走る。

暗い夜道を、ただ真っ直ぐに。


「かつて…ここは、人間の街はたくさんあった…」

ハンドルを握りながら、ロバートは話し出した。

僕はドアにもたれながら、流れる景色を眺めていた。

心地よい風が、頬を撫でるたびに、少し気持ちよかった。

空気は、街中より澄んでいた。

「今は…魔界に近い…」

ハンドルのそばに付けられたナビは、行き場所を教えるだけでなく、

魔物の居場所を教えてくれる。

僕らの進む方向にそって、魔物の反応は沢山ある。

だけど、肉眼では確認できない。

一定の距離を取って、僕らについて来ている。


「心配しなくていい。奴らは、襲って来ないよ」

ロバートはいきなり、ハンドルを右に切った。

すると、ナビに映る魔物の反応が驚いたように、ばらばらに散らばる。

「こいつらは、街近くにいる魔物と違い…ある程度は、相手のレベルがわかる。まあ…わかるようにしてるんだが…」

ロバートは、ハンドルを戻した。

「奴らも、死にたくないのさ」

僕は…ロバートの言葉にも無反応だ。

なぜか…ロバートの言葉は、

耳を通り過ぎる風の音より、耳に入らなかった。
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