天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

勇者

防衛軍が、すべてを守れる訳ではない。

何の助けも来ないで、滅びる町もある。


「お母さん!」

母親と2人逃げる少年は、何かに追われていた。

それは、魔物だ。

彼らが住んでいた町は、翼ある魔物達に攻められ、皆殺しになれた。

唯一町外れにあった少年の家族だけが逃げ延びることができた。

トラックに乗り込み、父親と逃げたけど…魔物の追撃は速く、

トラックは破壊された。

魔法が使えた父親は、2人が逃げる時間を稼ぐ為に、カードを取り出した。

「安全な町で暮らす為に、今までためたポイントを!使ってやるわ」

家族で一軒家を買う為にためた一万ポイントを、父親はミサイルを召喚するのに使った。

空を飛び回る魔物を遊撃するミサイルの束。

しかし、それだけでは勝てないことはわかっていた。

「逃げろ!防衛軍の管轄地である町まで」

トラックは、町まであと数十キの距離に来ていた。

しかし、徒歩では町に着く前に、魔物達に捕まる。

何もない草原には、隠れる場所がない。

母親は自分のカードを取り出し、確認した。

「ポール…」

母親は、自分のカードをポールに渡し、

「このポイントを使い、あなたはお逃げなさい。1人用のホバーバイクなら召喚できます」

「で、でも!お、お母さんは?」

「あたしはいいの」

母親はポールに笑いかけ、

「あなたさえ…生きてくれたら」

ポールの頭を優しく撫でた。

その瞬間、母親の体に槍が背中から突き刺さった。

「ポール…早く…」

心臓を一突きされた母親は、血を流しながら、その場で倒れた。

ポールにカードを渡しながら。

「お母さん!」

カードを握りしめながら、母親にすがり付くポールの頭上を、数百の突き翼ある魔物が旋回していた。


「お母さん!」

ポールの絶叫も、翼ある魔物達の嘲るような笑い声にかき消された。

もうポールには、逃げる時間なんてなかった。



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