天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
僕は、歩く。


玉座の間に繋がっている穴を潜りながら…。

ちらりと左手を見ると、そこには指輪がついていた。

僕とアルテミアの絆。


ぎゅと左手を握りしめた。

これが、僕の証だ。



僕は、玉座の間へと足を踏み入れた。

その瞬間、太陽のような眩しさを感じたが、

僕は目を背けなかった。



「ライ…」

ライもまた…太陽のバンパイアだからだ。




「赤星…」


白い光の中から、ふらつきながら、美奈子が出てきた。

身体中が抉れ、両手はなかった。

「力なんて…いらないと思っていた…」

美奈子の目から、涙が流れた。

「だけど…」

足がもつれ、美奈子は倒れた。

手がない為、床に激突すると思われた瞬間、

僕は駆け寄り、美奈子を抱き止めた。

それだけで、僕は片膝をついた。


「大切なものを…守れるくらいの力は…必要だった…」

「美奈子さん!」

「明菜を頼む…」



それが、美奈子の最後の言葉となった。


「美奈子さん…」

血を流し過ぎ…肉体の一部を失った為、

美奈子の体は、軽くなっていた。

「ううう…」

死んだ瞬間も、重さを感じなかった。

僕は美奈子を床に横たえると、そっと手で瞼を閉じた。

そして、手についた美奈子の血を舐めた。


「あなたの思いも…僕とともに!」

僕は顔を上げた。

目が赤く輝くと、今まで光で見えなかった部屋の様子が、確認できた。



「赤星浩一」

部屋の真ん中に、ライがいた。

ライはフッと笑い、

「どうした?ボロボロではないか?昔会った時の力も、感じないが、どうした?」

嘲るように言った。

「ライ!」

僕はふらつきながら、立ち上がった。



「こうちゃん…」


か細い声が、ライの右腕からした。

僕は、目を見開いた。


ライの右腕に胸を貫かれ、空中に浮かんでいる明菜がいた。


「明菜!」

僕は絶叫した。

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