天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「痛っ!」

刃を握り締めてしまった少女は、ナイフを離した。

血のついたナイフが、床に落ちると、

少女の手からも、血が流れ落ちた。

九鬼は眉を潜めた。




「今だ」

モニター室から、その様子を見ていた才蔵は、目の前にあるパソコンのキーボードを叩いた。

そして、パソコンの横に置いてあった外部マイクに向かって、叫んだ。

「研究所にいる…全職員に告げる。ご苦労だった。もし、逃げれるなら、研究所から逃げよ!」

才蔵はニヤリと笑うと、

「今から、ここは闇に捧げる」

それだけ言うと、才蔵はマイクを切った。

そして、はははと大笑いした。

「真弓よ!ここからが、本番だ!闇の中から、見つけよ!希望を…」

才蔵があるボタンを押すと、モニターに映る九鬼の部屋の床が、輝き出した。

「でなければ、死ぬか…取り憑かれるだけだ!」





「!?」

ずっと部屋にいた九鬼も気付かなかったが、

床はタイル一枚剥ぐと、液晶パネルになっていたのだ。

光輝くパネルには、タイルを透けて、ある模様を浮かび上がらせた。


それは、魔法陣である。

「ハハハハ!」

才蔵は笑った。

「何年にも渡る…血が染み付いた部屋に、若き娘の生け贄!」

魔法陣は、血を流す少女を中心にして、回り始めた。

「闇が、現れる」

才蔵は、モニターに顔を近付けた。



「え…」

立ち上がった少女の足首が、盛り上がり…

それは、膝から腰へと、ボンプに水が入ったように移動していく。

「い、いや」

少女の胸が三倍近く盛り上がると、苦しそうに痙攣しながら口を開け、天井を見上げた。

眼球が盛り上がり、喉は膨れ上がる。

そして、少女は吐き出した。

無数の黒い糸を。


それは、反射的に後ろに避けた九鬼に絡みついた。

少女の口からは、とめどめなく…糸が吐き出された。

糸は壁をすり抜け、研究所内から逃げようとする人々に絡みついた。


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