天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
兜は、研究所に頭を下げ、

「闇に立ち向かう…戦士。いや、闇すら従える戦士を…作り出したかったのだろう…。自分の孫を使ってな」

「え」

「道具だと思えば、やめたらいい。高校は別の学校にいけば、お前はこの日々から、抜け出せる」

兜は、停めていた車のドアを開けた。

「最後の選択は、お前が選べるようになっている」




静かに、発車した車のエンジン音を聞きながら、

九鬼は、月を見上げた。


そして、ゆっくりと顔を下ろし、今度は両手を見つめた。

血塗られた手。

どこほどの命を断っただろうか。

九鬼は自由になり…そして、魔と化した才蔵を殺したことで、初めて実感した。

命を闇を…己の罪を。

例え、その意味を知らなかったとはいえ、

そうしなければ、生きれらなかったとしても。


(あたしは…なんだ?)

月に照らされながら、九鬼は今すぐには出せない答えを探した。


「お爺様…」

ただ…今わかることは、自分が大きな犠牲のもとで存在しているということだ。


「月の戦士…」

九鬼はもう、崩れ落ちることはなかった。

まずは、自分が存在する意味を探ろう。


九鬼は歩きだした。

ただ戦士を育てる為に隔離された…血が染み付いた場所…自らが、生まれ育った箱から歩き出した。


これまでの…そして、これからの意味を求めて。





その行く末を暗示するかの如く、

月が雲によって消え、


雨が降りだした。


その雨は、九鬼の頬をさらに濡らした。
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