天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
兜は、天井を見上げた。

壁や内装に違いは、ほとんどない。

空気さえも…。

「人という種は、どこでも同じような進化を遂げるのか?それとも、この世界の過去は…我々と繋がっているのか」

兜の言葉に、哲也は眉を寄せた。

「その謎は…これにある」

兜は白衣の中から、あるものを取り出した。

「こ、これは…」

テーブルの上に置かれたものは、ボロボロに風化した…眼鏡ケースだった。


「これは…この学校の地層…数百メートルの地下から出てきた」


「お、乙女ケースか」

哲也が手を伸ばした瞬間、乙女ケースは崩れた。

「!?」

驚き、宙で手が止まった哲也に、

兜が言った。

「これは…量産タイプです。乙女ケースのレプリカ」



「乙女ケースのレプリカ!?」

目を見開く哲也より、兜は崩れた乙女ケースを見つめながら、

「これが…この学校にあった…。この大月学園に!」

少し声をあらげ、

「そして、私は!私の世界の大月学園にいた。だが、今は!」

兜は手を伸ばし、ただの砂と化した乙女ケースを握りしめ、

「この世界の大月学園にいる!なぜだ!どうしてだ!と自問自答しても、答えはでない。それに、答えが出たところで、私の力では!元の世界に戻れない!」

手を開くと、砂となった乙女ケースが流れ落ちた。

「恐らく!九鬼真弓か、相原理香子のどちらかが…この異変の鍵を握っている。あなたが言うように、魔王が不在になり、起こったというならば…月影とは、この世界と、我の世界を繋ぐ鍵!!」

そこまで、興奮して言った後、

兜は笑った。

「だとしても…今は、関係ない」

兜が座るソファの横には、気を失っている十夜が横たわっていた。

「今は、この世界で生き残ることが、肝心!」

ちらりと、十夜を見ると、

「私の世界では…できなかったあらゆることを、この世界でなし」

兜は哲也を見、

「あなた方の力になろう」

頭を下げた。
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