天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「しまった!」

カレンが再びピュアハートを投げる前に、町並みに向かうミサイルを無数の光のリングが追尾し、切り裂いた。

建物に当たる前に、空で爆発するミサイルを、美亜は横目で見つめていた。

「うん?」

その目が、爆発の華が咲いている空に目もくれずに、悠然と歩く女の姿をとらえていた。

「月の女神か…」

美亜は目を細めると、鼻を鳴らした。

「フン。お前には、同情はするが…」

美亜が屋上から見下ろす中、月の女神は九鬼の前で足を止めた。


「理香子…」

唖然とする九鬼を、理香子は冷ややかな目で見つめると、

「装着」

と低いトーンで呟くように言った。

学園の上で輝く月が、輝きを増した。すると、月から一条の光が落ちてきて…理香子の体を包んだ。

「クッ」

九鬼は目を細めた。

目映い光は一瞬だった。

理香子の体を、淡い月の光でできた戦闘服が包んだ。


「こ、これが…」

九鬼は、理香子の姿を見て…目を見張った。

「乙女ゴールド!?」



「り、理香子!?」

倒れていたリオが、乙女ゴールドの姿を見て、絶句した。

理香子は、リオを見ることなく、

「あなたに、乙女ダイヤモンドの資格はないわ」

そう言うと、

「え!?」

リオの体を包むダイヤモンドの戦闘服が消えた。

理香子が右を突きだすと、ダイヤモンドの乙女ケースが現れた。

左手には、いつのまにか…プラチナの乙女ケースが握られていた。

「理香子!?」

驚き、駆け寄ろうとしたリオを、理香子はちらっと一瞥すると、リオはふっ飛んだ。


「!!」

そんな2人のやり取りをただ見ていた九鬼は、どうしたらいいのか…わからなかった。

「理香子…」

ただ理香子を見つめるしかなかった。

「今日が…あなたの命日よ」

ゆっくりと近づいてくる理香子の手にある2つの乙女ケースが輝き、形を変えた。

ダイヤモンドの剣とダイヤモンドの盾。

プラチナのブーツ。

理香子は、剣を九鬼に向けた。
< 1,534 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop