天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
形見
少女は、自らの力におののくよりも、もの凄さに歓喜した。

「ママ!」

一瞬にして、消し飛んだ湖に、少女の後ろに控えていた魔物達は、唖然とした。

「今の技は…」

バイラは、湖畔まで走り、数百キロはあった湖の成れの果てを確認した。

水はすべて蒸発し、地面はえぐれ…その威力はどこまで破壊されたかは、肉眼では確認できなかった。

「やはり…魔王の後継者…」

未だに残る…漏電したような電気のスパークと、魔力の残留力に、ギラは身を震わせた。

「これは…あの子の宿命…」

湖畔にあった樹木の影で休んでいた女が、立ち上がり、バイラ達のそばまで歩いてきた。

「ティアナ様…」

その美しいブロンドの髪を、風に靡かせ、憂いをたたえた瞳を、少女に向けていた。

「さっきまで…魚と戯れていたのに…」

美しいと思ったものを、次にはすぐに破壊した。

その無邪気な程の残忍さに…

振り返り、母親に向けてみせる無垢な笑顔。


「アルテミア…」





「お母様…」

アルテミアには、あの時の母の悲しげに微笑む顔が…なぜか忘れられなかった。

どうして…あんな表情を見せたのか…。



「それは…あなたが心配だったからです」

何もない暗闇の中、アルテミアの頭に声が響いた。


< 220 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop