天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
アルテミアはフッと笑った。

しかし、マリーは…目の前にいるアルテミアに、違和感を感じていた。

気は、さっきまで戦っていたアルテミアと同じだが、姿が違った。

ずっと目をつぶっており、先程まで天使の翼を広げていたのに…

マリーと同じ蝙蝠の羽。

「あんたは…」

その姿は、マリーには懐かしいが…今は有り得ない姿だった。


「お前は、もういらぬ」

どこからか声が響くと……マリーでも追うことのできない速さで、間合いを詰めると、アルテミアの手刀が、

マリーの心臓をえぐり出した。

「お前はもう…用済みだ」

アルテミアから発せられた声は、アルテミアではなかった。

マリーは、その声の主を知っていた。

そして、信じられなかった。

「お父様…」

アルテミアの両肩に掴みながら、マリーは地面に崩れ落ちっていた。

完全に、動かなくなったマリーを、確認するように、無表情で、しばらくマリーを見下ろす空虚なアルテミアの…口だけが、動いた。

「さよなら…マリー」

それは言葉にならない…口だけの動きだった。

「城に戻れ…」

また口が動き、今度は言葉が発声された。

その命令に、アルテミアは頷いた。

「アルテミア・キラー」

背丈の三倍はあろうかという…巨大な蝙蝠の羽を広げ、魔界の奥へと飛び去っていった。
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