天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

始まりの戦士

ポトポト…。

雨上がりのように、微かに降り落ちる液体に…

人々は傘をさしながら、歩いていた。その顔は、恐怖に歪んでいた。

早くこの場から離れたいのだが、走ったりして、刺激したら…殺される。

ビルだった瓦礫や、高い塔はへし折られ…

そこに吊された何百人という人の死骸。

小雨のように感じた滴は、死体から流れる血だった。

生臭さが、街中に漂っていたが、逃げることは出来ない。

ここは、檻の中。

人々は、空を飛び回る人面鳥の群に、飼われていた。

「畜生!」

人面鳥が、入って来れないくらい狭い防空壕の中で、勇者ダラスは、自らの無力さに怒っていた。

「ぎゃー!」

人の悲鳴がした。誰かが捕獲されたのだ。

ダラスは、防空壕から顔を出し、空を見た。

「今は、食事の時間じゃないはずだ…」

人面鳥は、1人の中年男を、鋭い爪を突き刺しながら、上昇すると、

民家の屋根に落とした。

「グェ」

屋根の上でバウンドし、転がっていく男を、地面に激突する前に、また捕まえると、再び上空から落とす。それを何度も、繰り返した。

「遊んでやがる!」

ダラスは怒りに身を震わせながら、防空壕の中に入った。

入り口は狭いが、中は六畳くらいの広さがあった。
< 237 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop