天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「彼女は、闘竜拳の使い手で…魔法を使わずに、素手で、ドラゴンを倒せる程の強者だった」

ロバートの話は、初めて聞くものだった。

「人一倍、正義感の強かったジュリアンは、アルテミアを産んだティアナが、許せず…彼女を殺そうとした…」


ジュリアンの強さと執念深さは、予想以上で、魔王軍は手を焼いた。

それを見かねた魔王は、ティアナには伝えず、直々に血を吸い、魔王の眷属に加えたのだ。

血を吸われたジュリアンは、すぐに魔王に支配されることはなかった。誰よりも強い正義感と、魔王の支配力が、頭の中で、せめぎ合い…

最終的には、生きるすべてのものを狂ったように破壊するバーサーガになってしまった。

魔王軍の規律も守らず、ただすべてを殺すだけの存在。それも、騎士団長クラスの魔力を持つ魔獣。

アルテミアの反乱以来、ジュリアンは魔王の城に、幽閉されていた。


しかし、最近…野に放されたらしく、東南アジアの軍隊を、皆殺しにしたという噂が話題に上がった。



「そのジュリアンは…口癖のように、アルテミアと叫びながら、動くものをすべて、破壊してるらしい」

ロバートの言葉に、僕は少し背筋に冷たいものを感じて、震え上がった。

「で、でも…遠くにいるから、会わないですよね」
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