天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「初期段階は、終えたか」

小型の水晶玉を、右手にかざしながら、クラークは呟いた。自然と、口元が緩んだ。

「しかし、まだ…始まったばかりだ」

クラークは、口をつむぎ、気を引き締めた。

手を下に下ろすと、水晶玉は消えた。

クラークは、歩きだす。


「しかし…格納庫に現れた時は、ひやりとしたが…結果的には、良かったか…黒竜の力を吸収できたしな…後は」

クラークが立つところは、何もない断崖絶壁の山奥だった。

自然にできたところではない。防衛軍が、地形を利用する為に、魔力で作った総本部だった。

崖そのものが、障壁となっており、その下…数百キロの底には、安定者の間があった。

誰も、基地だと気付くものはいない。

他の本部は、きちんとした構造物で、場所も明かされているが…ここだけは、別だった。

アメリカ大陸のグランドキャニオンを真似、アルプスの山々の尊厳さを合わせ持ち、遠くにはナイアガラの滝を連想される場所まである。


「悪趣味で…観光地を真似ただけだな」

クラークは鼻で笑うと、崖っ淵まで来て、その底を覗いた。

「こんな基地…気休めにすぎん」

遥か底を覗いていたクラークは、頭の中心を貫くような魔力を感じ、思わず顔を上げた。

「この感覚は」

クラークはカードを取出し、目に当てた。

赤く光る目が、急速に接近してくる飛行物体をとらえた。

「あれは…」

クラークは目を戻すと、気配を消し、崖に飛び込むと、地面の端を掴み、身を隠した。

カードが、警告を出す前に、クラークはカードをオフにした。

防衛軍本部に、けたたましいサイレンが鳴り響いた。


「来たか」

クラークは、天を見上げた。

真上にあった太陽を、何かが隠した。

影が、辺りを暗くした。

その影は…ゆっくりと翼を広げた。

白い羽根が、辺りに舞い落ちる。

翼を広げた瞬間、太陽より眩しく、暖かい光りが零れた。

「エンジェルモード」

クラークは、その美しい体に見惚れながらも、嫉妬した。

激しい憎悪も湧いてきた。

だが、それらを必死にこらえた。

「来たな!アルテミア」


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