天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「お母様!」

窓の外で…

雷鳴が轟く中、

黒い大きな影に、抱かれて…女の人はぐったりと、首をくの字に曲げ、眠っていた。

ブロンドの長い髪が、床についていた。

まるで、宮殿のような石造の広間の中央に、

影は立っていた。

雷に照らされても、床に…影を落とすこともなく、

抱かれた女の人の影だけが、広間内に伸びていた。


「どうして…お母様を!」

母親を抱く影は、こたえない。

「あらあ。いいじゃない」

右の柱の影から、マリーが姿を現した。

「そうよ。名誉なことよ」

左からは、ネーナが…。

「一生…お父様に、尽くすことができるんだから」

「家畜としたら、大したものよ」

「まあ」

マリーは顔を近づけ、

「一生…飲み物としてだけど…」

クスッと笑った。

「生きた樽ってとこ」

ネーナも笑った。


しばらく、沈黙に震えてから…

「うわああああ!」

絶叫とともに、

影に襲いかかる。

が、

凄まじい電流が、

体を包み、

そのまま…

意識を失った。

「お母様…」

崩れ落ち、意識を失う寸前まで、母親に手を伸ばしながら。


< 35 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop