天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
人生
「人生50年…」

信長は巨大な盃を持ちながら、鼻を鳴らした。

「といわれた頃から…わしは、一体どれほどの時を、過ごしたことか…」

謁見の間。

大きな広間の上座に、信長はいた。

変わった椅子に座って…。

それは、人だった。

僕には、見覚えがあった。

歴史の教科書や、テレビで見た…特徴的な髭。

「ヒットラー…」

僕は思わず、名前を呟いた。

「こやつか」

大皿で、酒をくらっていた信長は、僕の言葉に気づき、椅子を見た。

「ただの…絵描きだ」

そう言うと、大笑いした。

「おそれながら、申し上げます…この者は、かつてナチスという軍勢の長でした者です」

蘭丸は頭を下げ、信長に告げた。

「おお…そうじゃたわ」

信長は、酒を飲み干すと、皿をヒットラーの頭にぶつけた。

「軍勢は、なかなか手強かったが…こやつは、腑抜けだ。口は達者だが、武人ではない。家来を捨てて、最後は逃げよったわ」

ヒットラーは、ただ怯えている。

「国が強くても…個人が弱ければ…この世界では、関係ない」

紅は、僕に向かって呟いた。

「しかし、我らの軍勢に加わった兵士達は、よく働いております」

「わしが、ナチスを率いたら、良かったか?」

信長は、僕を見据えながら、大笑いした。


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