天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「信長様…おそれながら…」

「蘭丸!」

信長は、蘭丸の言葉を遮った。

「はっ」

蘭丸は、畳に額をつけるくらい、頭を下げた。

信長はただ、酒を飲む。

「わしは…自分の世界に戻れるのか?」

「はっ!信長様であることをやめ、記憶を捨て、もう一度…生まれ変わるならば…」

蘭丸は言葉を止め、顔をしかめると、



「殿が、生まれ変わることを…望めば…信長様であることを…捨てれば…」

蘭丸は目を瞑った。

その目に、涙が溢れた。

「蘭丸…」

信長は大皿を、脇に置いた。

「はっ」

「命令じゃ」

「はっ!何なりと」




信長は、フッと笑い、

「わしが、生まれ変わっても…そばにおれ」

信長の言葉に、

思わず顔を上げた蘭丸は、笑顔になり、

再び頭を下げた。

「はっ!」

信長は、大皿を蘭丸に差し出した。

蘭丸は近づき、大皿を受け取ると、信長は酒を注いだ。

「軍勢は、秀吉か…家康にくれてやれ」

「はっ!」

「もういらぬだろ?」

蘭丸は、涙を流しながら、酒を飲んだ。




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