天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

序幕

ヒトヒトと降りしきる雨の中、銃を構え、移動する部隊があった。

熱帯のジャングルは、雨期に入っており、ぬかるんだ足下と、視界を遮る草木が、やたらと隊員達の神経をすり減らしていた。

「どこにいる?」

十五人からなる部隊は、激しく振り出した雨音と、鳥や獣の鳴き声よりも、自らが持つカードの警戒音に、怯えていた。

「この反応は、間違いありません!やつです」

四方に、銃を突き出したながら、隊員の1人が叫んだ。

「馬鹿な…なぜ、やつがこんなジャングルにいる!」

アマゾンのちょうど真ん中辺り。アマゾン川は、数百キロ離れていた。

自然の宝庫であるこの地域に、人は勢力範囲を伸ばしていた。

獰猛な獣や、魔物もいたが、魔神クラスはいなかった。

それに、魔王ライが全世界にばらまいた…精霊達を殺す呪いは、このジャングルには少なく、カードのポイントを最小限に消費するだけで、魔法を使うことができた。

昼間でも、死に絶えたはずの精霊や妖精達が、飛び回っていた。

しかし、今日は精霊達がいない。

魔物でさえ、遭遇しない。

ただ天をも隠す程の緑が、あるだけだった。

「もうすぐ基地に着く!それまで、頑張れ」

先頭を歩く隊長らしき者が、激励した。

十五人は、あらゆる角度を警戒しながら、ジャングルを抜けようとしていた。

ふと、上を見た隊員は、木々の枝の向こうに、黒い影が飛び去ったのを見たような気がした。

首を捻っていると、後ろから来た隊員にぶつかった。

「チャーリー!ぼおっとするな!」

隊員が、叫んだ。

「はい!」

チャーリーは身を引き締めると、敬礼し、また歩き出した。


「もうすぐ基地だ」


数ヶ月前、消滅させられた防衛軍総本部に代わり、防衛軍は各地域に、基地を作り、拠点を広げようとしていた。

部隊が向かっている基地もまた、そんな新しく作られたものだった。

自然と精霊達の力を借りる為の基地。

発電所ではなく、発魔力所ともいえる場所だった。


「着いたぞ」

部隊は、ジャングルを抜けた。
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