天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
(俺は…何をやってるんだ)

西園寺はミサイルの連弾とともに、茂みから飛び出すと、アルテミアを抱き上げ、テレポートした。

行き先を追跡されない為、意識を無にし、飛んだ場所は……

初めて、この世界に来た所…砂漠だった。

「チッ」

西園寺は舌打ちした。何もない砂漠は、隠れるところがない。

アルテミアを砂の上に、優しく横たえると、ブラックカードを取出し、町がないか探る。

(あの場にいたやつら……あれが、魔神か)

西園寺の体に震えが走った。醸し出す雰囲気、感じる魔力…どれもが、今の西園寺を凌駕していた。

(へたすれば、死んでいた)

自分の行動が、信じられなかった。

なぜ、アルテミアを助けたのか。

そんな疑問が浮かんだ時、西園寺の手を払うものがいた。

アルテミアだ。

ブラックカードが、西園寺の手から、地面に落ちた。

「貴様!何のつもりだ!」

意識を取り戻したアルテミアは、何とか立ち上がろうとするが、まだ力が入らないようだ。

手を貸そうとした西園寺を、アルテミアはキッと睨んだ。

驚いたことに、両手両足の腱を切られたはずなのに…傷口が、もう塞がっていた。

(何という回復力…)

西園寺が感嘆していると、アルテミアはふらふらと立ち上がり、

視線の先に、砂の上に落ちたブラックカードを掴んだ。

カードキーを叩き、操作しょうとするが…暗証番号が違う為、発動しない。

「くそ!」

アルテミアは、ブラックカードを砂に叩きつけようとしたが、



止めた。

ちらっと横目で、西園寺を見ると、

無言でブラックカードを、西園寺に差し出した。

「あ…」

手を伸ばし、受け取った西園寺の首筋に、アルテミアは目をやった。

微かについた2つの歯形を確認し、呟くように言った。

「今日は、見逃してやる…よ」

そう言うと、アルテミアはまだ完全に治っていない足を引きずりながらも、歩きだした。西園寺に背を向けて。

< 539 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop