天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
仲間
(ダメだ…倒れそうだ…)

メロメロ達が軽快に、道を歩いていく…その後ろで、僕は腹を押さえながら、ふらふらと何とか歩いていた。

原因は、わかっていた。


空腹だ。

この大陸に来てから、まともな人間らしい食事は、していなかった。

理由は簡単だ。金がない。

カードが使えるなら、よかったが…この世界は、カードが使えない。

働いて稼ごうにも、盗賊団のリーダーとされている僕を、雇う所なんてない。

魔物であるメロメロやフレアは、自然の中から、食料を得ることができた。

妖精であるティフィンも、そうだ。

人間である…僕だけだ…。

今までは、襲いかかってくる魔物達から、何とか搾取していたが…。

生き血を啜るというのも、後から考えると…………


(人間として、どうよ?)

毎日、魔物から栄養を取るという行為に慣れない。

(まともなご飯が食べたい)

と願っても、それはなかなか叶えられなかった。

木の実や果物を、口にほり込んではいるけど…空腹を満たすものではない。

(バンパイアの本能に従え!)

心の底から、声がした。

でも、もう慣れていた。

結局、この声も、僕の心にある欲望と誘惑なのだ。

これが欲しい。あれが欲しい。

あいつが憎い。いなくなればいい。

そんな欲望は、誰にでもある。それを抑えてこそ、人間なのだ。

僕は、メロメロ達の後ろ姿を見ながら、ぐっと抑えた。



「人の村メロ!」

メロメロが嬉しそうに、叫んだ。

「様子を見てくる」

ティフィンが、飛び出した。

誰も通らない獣道を抜けると、いきなり崖があった。

その崖の向こうに、村があった。藁葺きの質素な家屋。

「人の村…」

僕は、茂みをかき分け、崖の端に立った。

数メートル先に、数十軒の家屋が見えた。

向こうも、こちらに気付いたらしく、家屋から人々が飛び出して来た。

「早いな!」

僕の体に、緊張が走った。

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