天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「この力は一体…」

不覚にも、先程の西園寺のストーレートがきいているようだ。

脳が揺れているような感覚が、ギラを包んでいた。

蹴りを首筋にくらいながらも、ギラは考えていた。

(こいつの属性は、火だ…それなのに、電気を帯びている)

それは、まるで………。


ギラの脳裏に、巨大な砲台のようなライフルを向ける…少年の姿が、甦る。

少し怯えながらも、どこか強い意識を感じた…少年。

目の前にいる西園寺と比べながら、ギラは心の中で笑った。

自信に満ち溢れた西園寺とは、比べるまでもなかった。

(だとすれば…この力は…)

西園寺の蹴りをくらい、不覚にも、片手を地面につけたギラの目に、気になるものが映った。

(何だ?この違和感は!)

ギラの目が見開き、その違和感を探した。

それは、西園寺の首筋にあった。

首筋に巻かれた布。

ギラは、地面につけた右手一本で立ち上がると、

西園寺の首筋に、手を伸ばした。

ギラの行動の意味を理解した西園寺は、後方にジャンプした。

右手で、思わず庇った首筋の仕草に、

ギラはにやりと笑った。

「お主の強さの理由が、わかった」


その言葉に、西園寺は首筋から慌てて、手を離した。

この動きに、ギラは確信した。

「リンネ!帰るぞ!」



クラークの剣に貫かれたリンネの体が、煙のように消えた。

「残り火か」

クラークは舌打ちした。

クラークの真後ろに、小さな種火が灯り…それが、大きくなると、リンネになる。

「あたしは常に、自分の種を巻いている。すべての種火を消さないかぎりは、あたしは消えない」

リンネは、クラークに微笑んだ。

「覚えておこう」

クラークが振り向いた時には、リンネはもういなかった。



「逃げたか」

今なら、リンネとギラという騎士団長を倒せた。

クラークは、後悔の念にかられた。

最初は危なかったが…。

クラークは、少し離れたところに立つ西園寺の方を見た。

騎士団長が去った為か…再び砂嵐が強くなり、近くにいる西園寺の表情を、肉眼で確認はできなくなっていた。



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