天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
核心の輝き
円状の指令室の中央に浮かぶ地球儀に、無数の赤い天点が点在し…蠢き合っている。

「現在、確認できたのが、すべてとは言えませんが…」

地球儀の真横に立つ…防衛軍の軍人が、説明を始めた。

「魔神の多くが、ロストアイランドに潜入しております。……しかしその後、この大陸から出てきた魔神は、いません」

地球儀の下にある大陸…ロストアイランド。実世界でいうと、オーストラリアに当たる。

(それにしても…)

腕を組み、地球儀の観察していた西園寺は、改めて…まじまじと感嘆していた。

中国からロシア…東欧の殆んどまでが、魔界とされ…

オーストラリアもまた…人のテリトリーではない。

だからと言って、他の大陸が、人間の領土というわけでもない。

常に、人は魔物と戦い、何とか結界を張り、町を作り…必死に生きているのだ。

この世界に、人が安全に暮らせる土地は少ない。


(中国やロシアが…魔界!?)

実世界で話したら、笑われそうだ。

(少し…納得する部分もあるか…)

西園寺は、微かに口許を緩めた。


人類の完全なるテリトリーを目指し、圧倒的な戦力と物量で、戦い続けたアメリカ大陸も…今は、壊滅状態になり、他の地域よりも、魔物の無法地帯と化しているようだ。

しかし。


西園寺は、組んでいた腕を外し、一歩前に出ると、

「ロストアイランドに向かった魔神達は、無視しょう。アメリカも、捨てる。今、我々が取るべき道は、いかにして、魔王の軍勢を弱体化させるか!そして、できれば…」

西園寺を、指令室にいるすべての職員が見ていた。

「直接、魔王の城を攻撃したい!」

その言葉に、指令室が騒めく。

西園寺は、言葉を続ける。

「現在、魔王を補佐する騎士団長も、つねに魔界にはいないと思われる」

西園寺が地球儀に向かって、指を突き刺した。

すると、ロストアイランドがクローズアップされ、

そこに、赤星が映る。

赤星の写真は、何かの履歴書だった。多分、日本エリアで、掃除のアルバイトをしていた時のものだ。

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