天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
満場の拍手の中、指令室から出た西園寺は、そのまま…ある部屋を目指した。


灰色の冷たい廊下を抜け、突き当たりにある鉄製の重いドアを開けると、

そこは、無数のコンピューターが並ぶ…研究室だった。

鉄製の機械。漂う化学薬品の匂いが、この世界には異質だった。

この世界は、別に科学が通用しない訳ではない。ただ必要がなかったのだ。

規則正しく並ぶパソコンの道を、横切り奥へ進む西園寺の目の前に、パソコンの画面をにらみながら、キーボードを忙しく叩く女がいた。

「どう?」

西園寺が、後ろから話しかけると、

女は、画面を見たまま、

「駄目ね…何度シミュレーションしても…全滅ね…」

邪魔臭そうに言うと、女はキーボードから手を離し、散らかっているディスクの上から、煙草を取り出すと、口にねじ込み、火をつけた。

「核を使っても、駄目なのか?」

女が座る椅子の背もたれに、手をかけ、画面を覗き込んだ西園寺に、女は肩をすくめた。

そして、煙草を吹かすと、

「論外よ。威力はあるけど、アメリカの二の舞になるわ。こちらに返ってくるだけよ」

西園寺は考え込み…、

「だったら…なぜ魔王の雷は、跳ね返せないんだ?」

「核やミサイルは、別に空間を破壊する訳ではないわ。物質的な破壊力だけど…魔王の攻撃は、結界や空間…魔力さえも破壊するのよ」

女はすぐに煙草を、山盛りになっている灰皿の山に差し込むと、またキーボードを叩きはじめた。

「ここの世界の核やミサイルは、魔力を起爆剤にしているんだろ?」

西園寺の疑問に、

「魔力を基盤にしても、破壊する力は、単なる化学変化よ。破壊力に意志があるわけではないわ」

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