天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「貴様…安定者になったのか?」

アルテミアは、苦々しくブラックカードを睨んだ。

「違う。これは、世界を救う為…君と戦う為だ」

ロバートは、ブラックカードをドラゴンキラーに差し込んだ。

「フン!前よりは、レベルが上がっているようだが…あたしを倒すだって!馬鹿に……?」

突然アルテミアの後方に、暗闇の穴が口を開いた。

ロバートは口元を緩め、

「ブラックカードを気にしすぎだな」

暗黒の穴は、ブラックホールのように、凄まじい力で、アルテミアを吸い込んだ。

「時空流し」

ロバートが指を鳴らすと、一気に穴は閉じた。

何事もなかったように、廃墟の静寂に戻る。

しかし、アルテミアが吸い込まれた空間に、突然ヒビが入り…景色が割れた。

まるで、ガラスのように。そして、景色はすぐにもとに戻り、アルテミアが同じ場所に立っていた。

「神は、どんな空間…どんな時間でも存在できる。故に、神なり……か」

ロバートは肩をすくめ、

「さすがは、天空の女神…アマテラスのような紛い物の女神とは違う」


アルテミアは、風に黒髪をなびかせながら、ロバートを見つめた。

「小細工をするな。あたしも、進化している」

アルテミアの言葉に、今度はロバートが、鼻を鳴らした。

「進化?退化の間違いではないのかな?今の君に、恐ろしさは感じない。ただ…哀れなだけだ」

「哀れ?あたしが!?」

アルテミアの眉が、ぴくっと動いた。

「哀れだろ?目的を失い…ただ破壊を繰り返すだけの神など」

ロバートは、周りを見回した。

「勘違いするな!ここにいる人間は、魔物にやられたんだ!」

アルテミアの苛立ちに、ロバートは唾を吐いた。

「魔物しか殺していないとでも、言いたいのか!どうして、嘆かない!救えなかった人を!助けられなかった自分自身を!!」

ロバートの殺気が、完全にアルテミアに向けられた。

「どうして、あたしが助けなくちゃならないんだ」

「お前は、勇者だったんだろ!」

「そ、そんな昔の話!」

少し動揺するアルテミアに、ロバートは襲い掛かる。

「だったら、なぜ!戦った!なぜ!人に憧れた!」
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