天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「傷は大丈夫なのですか?」

ライの居城の前に広がる向日葵畑の中で、1人佇むバイラに、サラが近づき、後ろから声をかけた。

「フッ…」

バイラは笑った。

「そんな…大したことはないさ……」


サラは、切なげにバイラを見つめ、

「どうして……妖精や、聖霊を解放しました?このことにより、人間はまた魔力を使えることになりました」

サラの疑問に、

「我は…人から生まれた。だからこそ…人こそが、この世界の悪だと思っていた…。こんなにも、脆い存在。だが……その人が、我を止めたのは、事実…」


バイラは、手の平を見つめた。そこに、二本の傷痕がついていた。


「バイラ……いや、魔王ライよ……」

サラは、バイラに跪いた。

バイラは、ちらりとサラを見た。

サラは、言葉を続けた。

「あなたは、アルテミアのそばにいて、彼女の成長を促し……玉座に座るもう一人のライは、ティアナを愛し続けた」

バイラは、向日葵を見つめた。

太陽の光が、届きにくいこの城に、向日葵を植えたのは、ティアナだった。


向日葵なんて、育たないというライに、ティアナは微笑んだ。

「大丈夫よ…。だって、あなたがいるじゃない」

微笑みかけるティアナは、ライに近づき、

「あなたは、太陽のバンパイアなのだから…」

ティアナは、ライの手を取り、自分のお腹にあてた。

「この子が、生まれる頃には、きっとここは、向日葵でいっぱいになるわ」



バイラは、向日葵を見回した。

「あなたとライが、1人に戻れば……赤星浩一にも、負けないはずです」

サラの言葉に、バイラは笑った。

「ライは動かぬよ……。この向日葵を守る為に」

バイラは、城を振り返った。

「悲しいですね…」

「そうだな…」

バイラは、目をつぶり、

「悲しい程……人を愛している…」






天空のエトランゼ〜断罪の天使達〜 END
< 726 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop