天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
優男
人は、社会的動物だとしたら、

この世界を生き抜く為に、強さがいる。

勝ち組と負け組というが…金を得るだけが…勝ちなのだろうか。

(まあ…お金のない私が言うのは、何ですが…)

量販店の品だしの仕事をしている浅田仁志は、ふっと幸せについて考えていた。

金を得て、何でも買えるようになれば…しあわせになるのだろうか。

何でも買える…何でも買うということは……本当に、ほしいものがないというではないのだろうか。

満たされた者が、何でも欲しがるのだろうか。

勝ち組、負け組…それは、満たされない者の慰め合いのように、感じていた。

心が、穏やかならいいじゃないか。

仁志は、贅沢を望んでいなかった。ただ起きた時、朝の空気を楽しみ、日々変わる季節に気付き、

ただ一生懸命に働き、食べるものをおいしく感じる。それだけでよかった。

だが、周囲の人々には、仁志は何の目的もなく、退屈な人間に見えた。

穏やか性格も、ただ暗いだけに感じた。


そんな仁志を、弱い人間は、格好のターゲットとした。

つまり、不満の捌け口としたのだ。




「トロいような〜さっさと、並べろよ!」

上司の言葉は、冷たい。

「はあ〜」

仁志の隣にいる先輩は、ため息をついた。

「どうして、お前と一緒なんだよ」

品だしは、お客と直接接客するとが、少ない。したといても、安い商品や、売り場の場所説明ぐらいだ。

つまり、接客に向かないと判断された者が、回される部署だった。

仁志の隣りにいる先輩は、最近この部署に、移動となったばかりだった。

「たくよ!お前と、俺は違うんだよ」


人は自分よりも、下の者をつくり、そこにせめてものの安らぎを見いだす。

こいつもよりも上だ。

それが、明らかにわかるレベルで…自分を慰めたいと思った時、

人は冷たくなる。


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