天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
木漏
太平洋の赤道近くにある…小さな島。

木々が、生い茂る緑の島を、ただ青い海が囲っていた。

綺麗な島だが、砂浜がなかった。

まるで、空中庭園のように、海から突き出したような島は、人の浸入を拒んでいた。

自由に入れるものは、空を飛べる者だけである。

翼なき者は、入れない。

緑に覆われた島の中央に、穴が開いていた。

水が溜まり、泉のようになっていた。

もしかしたら、火山が地殻変動で、海底から突き出し…火口に、水が溜まったのかもしれない。

今は、ただ…静かで、のどかな島だ。

泉は、澄んでいるが…底は見えなかった。

風に揺れる水面の下から、黒い影が上昇してくる。


水面から飛び出した影は、水しぶきを上げながら、太陽に向かって、ジャンプした。

もし、人がいたなら…人魚と勘違いしただろう。

事実は…その影の下半身は、魚の尻尾だった。


「ここは…気持ちいいわ」

影は、また水面に飛び込むと、顔を出した。

マーメイドモード。

アルテミアの水属性の戦闘スタイルだった。

顔を出した後は、普通の人型に戻り、アルテミアは水面に浮かんだ。

空を見ていると、ひたすら青く…太陽が近い。何とか掴めそうに見えた。

しばらく浮かんでいると、アルテミアの回りに、渡り鳥達が羽を安めに、泉に降り立った。

アルテミアは気を押さえて、風と一体化する。

鳥の鳴き声…木々の揺れる音…自然の音は、すべて心地よかった。




そんな静寂を破るように、場違いな電子音が、泉に響いた。

驚いた鳥達が、一斉に飛び上がる。


アルテミアは、携帯を取り出した。

そして、その文面を見て、鼻を鳴らした。

「やれやれ…」

アルテミアは携帯をしまった。


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