天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「ここか…」

美奈子と明菜…そして、神野は、山々の隙間から見える原子力発電所を見つめていた。

時間にして、十時半。

発電所までの舗道は敢えて避け、道無き道を歩いてきた。

神野は、発電所を見つめながら、右腕の疼きを感じていた。

「ここからは…後一時間くらいで、発電所に着くでしょう。しかし!無事にたどり着けるか…」

神野の言葉に、美奈子は息を吐くと、

「どうだろうな……」

発電所を凝視した。



「でも…本当に…破壊などするのでしょうか?」

明菜は、彼らのやろうとしていることが、信じられなかった。

「自爆テロと同じ……しかし、質が悪いがな」 

美奈子は、拳を握り締めると…突然、二人から離れた。

「部長!」

驚く明菜に、美奈子は言った。

「あたしは、別を行く!固まらない方がいい!それに、二人も足手まといがいると…神野さんが、戦いにくいだろ?」

「で、でも!」

「心配するな!」

美奈子は、すぐ下に見える舗道に向けて、滑り落ちていく。


「部長!」

明菜の叫びを振り切って、美奈子は急な坂道を、降りていく。舗装はされていないし、脆い地面はすぐに崩れていく。

美奈子はなぜか、下までたどり着ける自信があった。

十メートル下の舗道に、降り立つ確信が。

(あたしが…女神だと言うなら…一人でも、できるはずだ)

坂道というか…崖が崩れ落ちる前に、美奈子はジャンプして、舗道に着地した。

そして、明菜達の方を振り返ることなく、美奈子は舗道を越え、さらなる茂みの中に消えていった。



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