天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
火人
11時37分。


原子炉の制御をコンピューターから、災害時の為などにある手動での操作に変えたのは……仁志だった。

彼は、原子炉のそばにある制御システムを作動させ…外部からの命令を一切受け付けないように、遮断した。

そして、もしもの為に…原子炉の活動を一時だけ、止めようとしていた。

それで、都市圏の電力の供給量が減ったとしても、爆発するよりも、ましだった。



この日の為、仁志はこの発電所のシステムを、勉強した。

単純ではないが…地震などの災害時のマニュアルは、大いに役に立っていた。

仲間には、内緒で学んだ知識を…本当に、使う時がくるとは…。 


完璧に、災害時の緊急システムに移行できたことに、ひとまず仁志は、安堵のため息をついた。

原子炉の周りは、完全に他から隔離されており、

研究員以外は入れない。

万が一の放射線洩れがあった場合の対処だろう。


仁志は汗を拭うと、後ろを振り返った。

誰もいない。


少し前の社内放送で、裏切り者がいる。原子炉に、向かえという放送も、聞こえた。

だけど…まだ仁志とは、わかっていないみたい。

それに、放送があったのに、誰も来ない。

「何かあったのか?」

逆に不安になった。

生体兵器を移植していない…仁志のような非戦闘員には、何の変化もなかったので、知ることはなかった。

仁志は、この後…どうするのか…決めていなかった。

ここを離れたら…制御システムを変えられるかもしれない。

だから、ここから離れられない。

だけど、危険だ。

仁志は、ジレンマに陥っていた。
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