「部活~ウチらバスケ部~番外編」    佐紀、二十歳
(1)ランニング

周りの木々は、そろそろ、
冬支度を始めていた。

急な長い坂道の右には、桜並木、
左には、銀杏が植わっていた。

桜はもう、枝だけの裸の姿をさらし、
銀杏も、化粧を変え始めていた。


その坂道へと続く曲がり角から、
トレーニング・ウエアを着た女の子が、
次々と現れてきた。

苦しそうな顔をして、坂道を上り始める。

しかし足は、小刻みにリズムを刻んでいた


タッタッタッタ…………


  「はっ、はっ、…………はっ、はっ」


タッタッタッタ…………


  「はっ、はっ、…………はっ、はっ」


その先頭を走っていたのは、佐紀だった。

前方を見上げると、勾配のキツい坂が、
一直線に、延々と続いている。

佐紀は、うんざりとした目で坂を見て、


  “なんで体育館を、こんな山の上に
   造ったんだろう”


この坂にかかるといつも、そう思っていた。

往きは下り坂だから、比較的、楽だが、
帰り路、十分走り疲れた後に、
この坂が現れるのだった。


しかし、その後いつも、


  「まっ、練習環境としては、最適だな」


そう思い、坂の事は考えないようにして、
ただ黙々と走るのだった。

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