ノラ猫
 
「ほんと!?よかったぁ!!」


俺の答えを聞いて、綾香はまた、花のような笑顔を見せた。

その笑顔を見ていると、なんだかほっとする。
自分がいいことをしている気分になる。


「それだけ伝えたかったの。
 必死になって、追いかけてよかった」

「ったく……。また発作が起きたらどうすんだよ。
 手術の日まで、安静にしてないとダメだろ」

「だって……」

「ちゃんと来てやるから……。
 だから今日はもう病室戻れ」

「はぁい。じゃあ、また明日ね」

「ああ」


綾香はまだ俺といたそうだったけど、半ば強引に病室へと戻した。


姿が見えなくなって、雄介が口を開く。


「あの子は?」
「……入院患者。ちょっと知り合いになっただけ」
「好きなの?」
「そんなんじゃ……」
「やけに、あの子には甘いのな。凛ちゃんには冷たいのに」
「……」


それを言われて、何も答えられなかった。


俺だって、凛に優しく接してやりたい。
だけどどうしても、凛を目の前にするとうまく言葉が出てこない。

思い出せない自分に苛立って、
かけてあげる言葉も見つからない。


昨日だって本当は……。
 
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