ノラ猫
 
「ん……んー……」


じっと顔を見上げていると、途端に眉間に皺がよった。

そしてゆっくりと開かれる瞼。


「おわっ……」
「起きた」
「な、んだよっ……ずっと見てた?」
「……うん」


目を覚ました智紀は、慌ててあたしから離れ、口元を手で覆った。


「よだれとか垂らしてなかった?」
「大丈夫」
「なら、よかった……」


いったい、何の心配だ……。

そう思いつつも、そんなことを気にしている智紀が、なんだか可愛く思えた。


「あー、あのまま寝ちゃったんだ」
「そうみたい」
「首いてー」


やっぱり、智紀も知らずうちに寝てしまったらしい。

首をぐるぐる回しながら、立ち上がって大きく伸びをした。


「何時?」
「6時50分」
「もう時間か」


今日は平日。

智紀も変わらず、仕事だ。
 
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