ノラ猫
 
「すぐそこだから。
 とりあえず、雨やむまでいれば?」

「……大丈夫」

「こんなとこで、死体が見つかったってなるほうが嫌なんだけど」

「ちょっ……」


突き放そうとしたところで、グイと腕を引かれた。

突然のことでビックリして、思わず体がよろめいた。


「っつか、お前、すげぇ体熱いじゃんっ。
 ほんと何やってんだよ!」

「だ…じょうぶだから……」


座り続けていたから気づかなかったけど、突然立ち上がらされたあたしの体は、予想以上に重たい。

しがみついていないと立っていられないどころか、視界がどんどんかすんでいく。


大丈夫。
むしろ好都合。

このまま……
目を閉じて……



「ったく……バカじゃねぇの」



重たい瞼が完全に閉じ切った時、自分の体がふわりと浮いた気がした。


何がどうなっているのか、そんなことさえ分からないほど、もう意識はそこにはなくて……


「……」


だけど自分の体が、温かい何かに包まれている感覚だけは、なんとなく分かった。
 
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