うそつきは恋のはじまり



「っ……女ナメんなぁぁぁーーー!!!」



私はサラリーマンの太い右腕をガシッ!と掴み、そのまま勢いよくその体を背負い投げをした。

揺れる電車のなか、ドターン!とその重い体が床に叩きつけられる音が、その場に響く。



「ひ、ひぃっ……なんて女だぁっ……」



驚きと痛みに酔いも覚めたのか、サラリーマンはへっぴり腰でその車両から逃げて行く。

「ふぅ」と安心しながら姿勢を戻す私に、周りの人々からはパチパチと聞こえ出す拍手。



「あ、どうもお騒がせしてすみません……はっ!大丈夫でしたか!?」



男の子の存在を思い出し振り返ると、そこには高い身長に小さな顔。茶色いふわふわの髪の、くりっとした目の男の子。

可愛い、そしてかっこいい。両方を感じさせる顔立ちに、一瞬目を奪われる。



が、その表情は怪訝というか怯えというか……いわゆる、ドン引き。



う、うわぁ……引かれてる……ドン引きされてるー!!!

そりゃあそうだよね、目の前でいきなり女がサラリーマン投げたら引くよね!怖いよね!サラリーマンより私が怖いよね!



「あ、いえ、私その……す、すみません!すみませんでした!!」

「あ……いや、すごいね」

「そ、それほどでも!」



今更ながら身なりを整える私に、彼は驚きながら私の手元に目をとめた。


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