重なり合う、ふたつの傷


ルミに誘われて見に行った映画がホラーで、それ以来、ホラー映画の予告が流れるだけで、ぞっとしてしまう。

二、三日は恐怖心が消えなくて学校のトイレもルミに着いて行ってもらうほど。


「最近さ、無断で写真撮られるんだよな。撮ってもいいですか、って聞かれたら、いいよ、って言うし、一緒に撮ってもいいけど、なにも言わずに隠し撮りみたいなのは勘弁してほしい」


世の中、防犯カメラもそうだけど、人の目以外にも沢山の目があって、ホラー映画以上に怖い気がする。

それによって犯罪が回避されるならいいけど、逆の場合もあり得るかもしれないし。


「その上、ネット上にも公開されてたりするからさ」


零士は店の外を気にかけながら、スープを飲み干した。


「おやじさん、すみません。迷惑かけると悪いから裏口から出てもいいですか?」


「いいよ。売れてきた証拠だね」


「いえいえ、まだまだです。じゃ、すみません。うまかったです」


零士と私は裏口から抜け出した。

まるでどこか遠くへ逃避行するかのように。

零士は私をどこか遠くへ連れて行ってくれる人。





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