重なり合う、ふたつの傷


朝ご飯はトーストと目玉焼き。グリンピースのスープ。


「目玉焼きね、私、半熟派なんだけど、蒼太くんも半熟で平気?」


「俺も半熟派。それはいいんだけど、この緑のスープ」


「グリンピースのスープだよ」


「グリンピース……」


「もしかしてグリンピース嫌い?」


天野くんが柴犬みたいな目でコクンと頷いた。


「嫌いなら昨日スーパーで言ってくれればよかったのに」

「いや、まさかさ、グリンピースだけで出てくるとは思わないだろ。なにかの彩りとかさ」


「グリンピースだけじゃないよ。牛乳とコンソメとバターと玉ねぎと」


説明しているうちに、天野くんがスープを口に含んだ。


「無理に食べなくていいよ」


「イケル」


天野くんが再び柴犬みたいな目でコクンと頷いた。


「うまい、イケル。つーかグリンピース好きになったかも!!」


「ほんと?」


「うん。俺、食えないものは絶対食わないから」


嬉しかった。

料理はこうやって食べてくれる人がいて、褒められてこそ作り甲斐があるものなんだと思う。


最近の私はひとりで料理を作って、ひとりで食べて、ひとりで食器を洗って。

寂しかったんだ、本当は。

誰にも言えなかったけど寂しかった。


でももう大丈夫。天野くんがいるんだから。






< 48 / 209 >

この作品をシェア

pagetop