重なり合う、ふたつの傷


『ジャージャー』と、水が勢いよく蛇口から吹き出ている。

トイレで顔を洗うルミ。


私はいつだってルミの味方でいようと思いながら、ルミにハンカチを渡すと「ありがとう」と微笑んだ。


そして、鏡に映った自分の顔を見て笑った。


「ヤバ、化粧全部取れちゃった」


「ルミはすっぴんの方がかわいいよ」


「そっかな。じゃ、無理して背伸びするのやめてみようかな」


ルミはそのまま教室へ。


天野くんもびっくりしていたけど、クラス全員がざわめくほど驚いていた。

そのざわめきで一瞬校舎が揺れた気がする。


私は更にルミを好きになった。


ナチュラルで今までよりちょっと幼く見えるピーチ色の頬と、その表情がすごくかわいかった。


もし私が男だったらルミに愛の告白をしていたと思う。きっと二人は相思相愛。





< 72 / 209 >

この作品をシェア

pagetop