重なり合う、ふたつの傷


天野くんとの思い出が心というアルバムに描写されていく。

それは確実に増えていた。


学校帰りに寄ったペットショップ。


犬や猫がいっぱいいて、私にとってはパラダイス。


だって、大好きな犬と猫と天野くんがいるんだもん。


なんて言ったら、動物と一緒にするな、って言われそうだけど。


天野くんも犬と猫が好きだから許してくれるかな。


よく『犬派』『猫派』って言うけど、私も天野くんも差をつけられない犬猫派。


両方ともかわいい。

選べと言われても選べない。

私はレストランへ行くと、どれにするか迷いに迷って、注文するまで十分以上かかる。メニューと、にらめっこ。優柔不断だ。


でも犬と猫、どちらが好きと選べないのは優柔不断とは違うと思う。


「こいつ、かわいい」


天野くんが微笑みながら、まだ子供の柴犬を見ていた。


「かわいい」と言っている天野くんの方がかわいい。


でも甘やかしちゃいけないから、口にはせず、店員さんが抱いていた猫を撫でた。


これがまたかわいくて。真ん丸の大きな瞳と折れた耳が愛らしい、スコティッシュフォールド。

「抱かせてもらってもいいですか?」


「いいですよ」


その子が私の腕の中にきた。

じんわりと伝わってくる温もりや呼吸音を感じていると、天野くんが「うっそ、かわいすぎ!!」と飛んできて猫の頭を撫でた。



私は天野くんが一番好きだとわかった。



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