じゃあなんでキスしたんですか?

 
突然のことに動けなでいるわたしに、もう一度ゆっくり唇を重ねると、彼は長い腕で私を包み込んだ。
 
ふわりと漂う、どこか甘い香り。
 
男の人のかたい胸と、ぬくもり。
 
胸の鼓動が、信じられないくらい速い。

「も、ももも」
 
声にならない声を上げると、わたしを包んでいた体温がゆるりと離れた。
 
そのままベッドに落ちた森崎さんから、規則正しい寝息が聞こえてくる。
 
絨毯に膝をついたまま、わたしは気持ちよさそうに眠っている顔を覗き込んだ。
 
寝てる……。
 
わなわなと震える手で、自分の唇に触れる。

「い、いま……」
 
指先では感じとることのできない、とても繊細なやわらかさを思い出して、息が詰まる。
 
わ、わたし……森崎さんと、キスをしてしまった……?



「う……」
 


嘘でしょ――――







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