好きになっちゃダメなのに。

「……何見てるの?」

作業の手を止めて私を見る速水くんに、私は「なんでもないよ」と笑った。



……ついこの前までは、まだ戻れるって、思ってた。

ドキドキなんて気のせいだって、思ってた。


でも、そんなことを考える時点で、きっと私はこの人に堕ちてしまっていたんだろう。



気付いちゃったら、認めちゃったら、もう引き返せないよね。


速水くんには好きな人がいるって、分かってるのに。

それが私には敵うはずのない人だっていうことも分かってるのに。

つらい恋になるって、分かってるのに。


それでも、もう認めるしかないみたい。



────私。

速水くんのことが、好きなんだ。


< 223 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop