ある、夏の日
冷房で快適だったコンビニから一歩出た時点 で、感じる暑さは異常だったというのに、そ んな表情一つで俺の身体はもっと暑くなる。

それを誤魔化すようにアイスをまた食べてか ら、やっぱり…とチラ見してしまう。

──ドクン!

その時、心臓が大きく音をたてた。

まるで、見えない何かを見ているかのよう な、どこか遠くを見つめる瞳。

絶対に、笑っているわけではない。でも俺が見てきたどの君とも、違う表情をしてい た。

言うなら……そう。“無”に近いような。

少しだけ開かれた口も。

滴る汗も。

すべてが、色っぽくて。

「…………ねぇ」

前を見たまま呼びかければ、君は立ち止まる。 

いつもなら俺の少し前を歩いてる君は、今日はなぜか少し後ろを歩いていた。

俺は振り返る。

なま温かい風が、俺たちを揺らした。








──君が、悪いわけじゃない。

「家に着いたら、さ」

そう。こんな気持ちになるのはきっと。

「やらしいこと、してみよっか?」

異常なくらいの、暑さのせい。

握りしめた拳。

その手に、溶けたアイスが少しだけ、こぼれていた。
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