㈱恋人屋 TWICE!
ファイル17・義理の父親・新海恭人
「プルルルル…。」

耳元で発信音が鳴る。このままだと決心が揺らぎそうで、親指は通話を切る準備をしている。

「はい、新海です。」

電話の声の主は、菜月くんのお父さん、新海恭人(シンカイ・キョウト)さんだ。

「あ、お義父さん…。」
「紗姫ちゃん? どうしたの?」

御覧の通り、お義父さんはとても物腰穏やかな人なのだが、やっぱり電話をかけるとなると緊張してしまうのが常。

「実は…ちょっともめてしまいまして…。」

私は、まだ少し震える声でお義父さんにさっきのことを話した。

「私、どうしたらいいか分からなくて…。」

すると、お義父さんは穏やかに笑った。

「ははは、それはよかったじゃないか、紗姫ちゃん。」
「えっ…?」
「初めてじゃないか? 菜月と夫婦喧嘩なんて。」
「夫婦喧嘩って…こういうのでしたっけ?」
「うん。こんなもんだよ。」

イマイチ違和感が拭えないのは、私に勝手な固定観念があるからだろうか?

「喧嘩するほど仲がいい、って言うでしょ? 夫婦も、夫婦喧嘩はした方がいいんだよ。コミュニケーションを取れるからね。だから大丈夫。喧嘩したことを後悔することはないよ。」
「でも、解決策が見つからなくて…。」
「そんなの簡単だって。」
「謝るんですか?」
「いや、ちょっと違うね。」

そしてこの後、お義父さんは意外な一言を口にした。
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